永遠の夜明けのアパートは。 (ページ26)

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「……はぁ……」

黒髪の少女のため息は、アパート内の騒音にかき消され聞こえなくなる。

「なんで私ばっかり……もう慣れたけど……」

げっそりとしながら、ひとつひとつ丁寧に皿を洗っていく奏乃。
そんな彼女に、小さな影が忍び寄る。

「たしかかのといったな。なにをしておるんじゃ?」

「わっ、ふ、副管理人さん……!」

「アンヘルでよい」

「アンヘルさん……えっと、お皿洗いです……」

「ふむ。きょうはきさまがさらあらいとうばんのひなのか?」

「さ、皿洗い当番……では、ないですね。私が毎日やってます」

「ほう。すすんでかじをするのはいいことじゃな」

「えーと……す、進んでっていうか……やらされてるっていうか……」

それを聞き、眉をひそめるアンヘル。そして次の瞬間、はぁーと大きなため息をつき、奏乃の方に手を突き出す。

「かせ」

「……え?」

「そのすぽんじとせんざいをかせ」

「で、でも」

「いいから」

「は、はい……」

アンヘルの圧に負け、手に持っていたスポンジと洗剤を彼女に渡す。
すると、アンヘルはせっせと手際よく皿を洗い始めた。

「あ、アンヘルさん……!」

「きさまのだめなところはふたつじゃ。どんなにりふじんなことでもたのまれたらことわれないこと。それと……たすけをもとめず、ひとりでぜんぶせおいこむことじゃ。
いやなら、しんどいならたすけをもとめたらいい。きさまにはあのろりこんややんきーがおるじゃろ。たすけをもとめて……それでもだめなら、わしがおる。ちからにはなれんとはおもうがちゅうにがみもおる。だから、えんりょせずわしらをたよってくれ」

「アンヘルさん……!!」

「ほら、きさまはやすめ。きょうはわしがやってやる」

「うぅ……本当にありがとうございます……!」

小さくとも頼もしい副管理人に、より一層希望を抱く奏乃であった。

「……で、これはどうすればいいんじゃ?」

「……アンヘルさん……やっぱり私やります……」

「ち、ちがわい!!できないんじゃなくてやったことないだけじゃ!!てっ、てんしのせかいにはそもそもさらがないからのぅ!!(?)」