夢物語のp,2 ページ2
あの人の生き様が好きだった
俺はカタギにはなれねぇって分かってんのにアンタがカタギになって自分の店持って上手くいってても俺を傍に置いてくれたアンタが
小卒と共に裏社会の組織に売り飛ばされたって話した時、別に親の事恨んでもねぇし、むしろ組でも良くしてもらって楽しんでンのに話聞かず勝ち目も希望もねぇのに組に俺を解放するよう言いいこうとしたり
弱いくせに馬鹿で無鉄砲で女に弱いアンタが俺は、大好きだった。
no side
暑さが鬱陶しく付きまとう中一人の男が墓参りに来ていた
男は水を変えたり掃除をしたりと、一通りやるべき事を終わらせると
一本のタバコに火をつけ線香と共に置いた。
ジーンズにパーカーというラフな格好で墓の前に座り込み返事の帰ってこない墓に向かって一人ボソボソと何かを話した
『なぁ、俺さ若頭補佐になったんだよ、柄じゃねぇだろ?笑えるよな。』
目線を少しずらせば墓碑には佐野真一郎という名前、そして日付と年齢が書いてあった。
2003年8月13日
23才
刻まれた日付は2年前の一昨日。
年齢は僅か23才
つまり2年前の一昨日、墓の中にいる人物は僅か23才という若さでこの世を去ったということになる
『なぁ、知ってるか?俺、アンタと同い年になっちまったンだぜ、あの黒龍の初代総長様がたった23年で人生終わらせやがって、』
久し振りに会った今牛という男の髪が派手になっていたこと。
自身の所属する組で起きたこと
墓の中にいる人物が自身の隣に居ない事への不満
次から次へと途切れること無く言葉を零した。
いい知らせも悪い知らせも全て。
そして最後に口を開いた時声よりも先に座り込んだ男の携帯が鳴った
男は1度携帯を開いたもののすぐに閉じ
『またいつか来る』と告げ来て直ぐに置いた灰になったタバコの吸殻を持って黒塗りの高そうな車に乗り込んだ
去り際の男の顔からは感情や考えが読み取れることは無く、
ただ、そこにプラスの感情はないということだけが痛い程伝わった
神様、どうか名も知らぬあの若い男にあの男が幸せだと思える未来と夢物語から飛び出す為のキッカケを。
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作者名:カタギリ。 | 作成日時:2021年10月28日 16時