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芳ばしい香りがするクリームブリュレが
程よく口の中で溶けた


おみくんは、一人で来ている時は四ノ宮さんと何度か話をしていたみたいで、仲睦まじく話していた








「登坂さんがここに人を連れてくるなんて思わなかったわ〜」



「俺もです。笑」








おみくんが言ったように、
本当に誰も連れてきてなかったみたい。

初めて

そんな響きが少しくすぐったい








「 Aちゃんも、元気そうでよかった… 」








安心したわ

あの時と何も変わらない笑みが
昔を思い起こさせる








『 … しばらく連絡をしていなくてすみません』



「そんなのいいのよ。
それに、晶子さんから聞いてたわ 」



『っそうだったんですか…?』



「ええ。孫が一緒だから毎日楽しいって喜んでたの」



「 … 孫?」









わたしと四ノ宮さんの関係も分からないまま、晶子さん、孫、なんてどんどん進む話に、おみくんが首を傾げた


話していいの?

四ノ宮さんの目が私を見つめる









『 … ここ、来たことあるって言ったでしょ?




昔、家族で来てたの。


お父さんとお母さん、弟におばあちゃん



月に一度だけ。

どんなお仕事の時でも、必ず休みを取った。』









おみくんには、

わたしの口から伝えたい。






ウソをついてしまった分、訂正したい。









『 四ノ宮さん、すごく気さくだから
私の家族とも仲良くて。

特におばあちゃんが喜んでたの。



晶子は、私のおばあちゃんの名前。

1回逃げちゃったって言ったでしょ?その時に、ずっと面倒を見てくれてたのがおばあちゃん 』




「 …懐かしいわね 」



『 うん、最近顔見に行けてないから行かないと… 』









初めて

人に自分のことを話すのは



少し難しい




上手く、過去を辿れない






さっきまで口に運んでいた手も止まって、
口の中が乾いていくのが分かった









「 … 今日はもう閉店にするから


ゆっくり話すといいわ」




「え、いいんですか…?」




「 ええ。大切なAちゃんのためだもの。

……ゆっくり、話を聞いてあげて?」








背中を優しくさすり、
四ノ宮さんは席を外した。



わたしとおみくんだけになったここは、何故か酷く寂しくて。話そうとしていたのに、言葉が詰まってしまう。






すると、

私の手を包むように、臣くんの手が触れた







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作者名:miu:miku | 作成日時:2020年9月15日 22時

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