End of Line 【登坂広臣】 (ページ6)

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…

『ありがとうございました、失礼します…』

「「あざした！」」

大きな声に見送られてスタジオを後にした。
彼らはこれから、大切な打ち合わせらしい。

見送りは遠慮した
来た道戻るだけだし…

そう思ってたけど、

『うそじゃん…』

人気のないフロアで少し迷ってしまった。

降りるとこ間違えたかな…やっぱり案内してもらえばよかった。

ため息をついてエスカレーターのボタンを押したその時、ふと、目に飛び込んできた文字

『ッ、… 』

レコーディングルーム

懐かしいその響きに吸い寄せられるように近づいた

取っ手に手をかけてゆっくりと引くと、カチャリという音と共にドアが開いた

パッとついた明かりが、マイクとヘッドホンを照らす

ゆっくりと、手を伸ばしてマイクに触れた。

ヒンヤリと冷たくて、温かい私とは反対で、喧嘩しているみたいと思った

わたしの一方的な喧嘩

『……』

ひんやりとした金網に、指先の体温が奪われる

緊張からかな、
自分の手が微かに震えているのが分かった

きゅっと手を握る

『 … ねぇ君はどうして

好きになりすぎた私に

優しくするの__________ 』

ずっと、聞いていた歌

女性が歌うにはあまりに哀しすぎるこの歌を、あえて私が歌うのはさぞお似合いだと自負してる。

こんなに歌ってなかったのに、思ったより声が喉から出てきて、

『ッ、知らなくて、…いい、のに

知りすぎて、ｯしまったの___________ 』

滲んできた視界に、あぁバカだなって。

持てるもの全部を投げてしまったあの日の自分は、バカだけど間違っていたとは思わない。

…思いたくない。

歌えなくなったわたしを、必要とする人はいない。

こんな時ばかり、声が出て、歌える私はズルい

喉にそっと手を添えた

まるで自分を詞にしたかのような、この曲。

そのとき、

パチっ

マイク上のスポットしか付けてなかった電気が、一変し、室内全体が明るくなった

「っ、蘭堂、さん…？」

『ｯ！！』

開いたドアから、怪訝な表情の登坂さんが顔をのぞかせていた

その後ろから、「おみー？」って声が聞こえる。

咄嗟にその横を通り過ぎようと駆け足で抜けたけど、それは叶わず、パシッと手を掴まれた

…