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マジで気づかないじゃん…
ドアを開けてみても、こっから声掛けても全然見向きもされない。
無視、じゃないか…
いつものカウンターじゃなくて、テーブルにいる彼女は目を瞑りながら、何かを口ずさんでいる
耳を済ませてみたら、聞いたことの無いメロディー
『 one last time 〜 』
近づいても気づく気配もない。
無防備すぎる。
「最後に、もう一度? 」
テーブルの反対側からまた声をかけた
状況にやっと気づいたのか、大きな音を立てて飛び上がった
疑うように、俺の頬を恐る恐る触るのとか、飼い主に慣れない犬みたいで、可愛く見えてしまう
現実ってやっと理解したのか、目を見開いて手を離そうとするから、そのまま掴んで、また俺の顔に添えた
ポポポって赤くなってく顔がおかしくて
つい笑った
「これ、なんの歌?」
白紙の上に、置かれた言葉
One Last Time
一緒に月の光を辿ろう
『 …… いま、何となく浮かんで… 』
いままでもこんな風に浮かんできた言葉を繋げていたから…クセで…
モジモジしてる姿も
なんか可愛くてクシャりと頭を撫でた。
「話そ。これからのこと。」
『…はい。よろしくお願いします』
スイッチを入れたら、すぐに仕事モードに切り替わって、可愛らしいそれらは大人の表情へ。
.
.
.
『 FULL MOON … 』
「上手く伝わった?」
ツアーについて。
それに加えて、リリース曲について、ストーリー性で作られているということ。
でも、それらに囚われすぎずに、Aが作る曲調を大事にしたいということ。
一気に話しすぎたかも…
Aは、資料を読みながら書き込んだメモをまた読み直している
『 LDHさんから、頂い名前があってね』
「え! 作ることになったの?」
『ううん。限りなく私を守ってくれた結果、提案してくれたの。
LUNAです。』
「ルナ?」
『スペイン語で、月
臣くんのツアーを成功せるためにも、最大限尽くすから 』
ツアータイトルにぶつけたのか、彼女を思ってか首を捻ったけど、ヒロさんたちが考えることにおよべるとは思えなくて、素直にそれを受け止めた。
まっすぐ俺を見つめるその目に偽りなんてないだろう
「飯に行ったり、色々一緒に話して
作ってこ」
『うん。頑張ろうね』
俺たちの長い1年が始まろうとしていた。
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作者名:miu:みく | 作成日時:2020年9月5日 7時