End of Line 【登坂広臣】 (ページ40)

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「まさか2人も来てたなんて思わへんかったわ」

『よく来てくれるんだよ』

うれしいなぁ

さっきまでふたりがいた席を眺めるAの目は、優しい。

自分がランページであることは、隠せるものなら隠しておこうと思ってた。この落ち着いた関係が無くなると思うと残念だったから。

けど、Aは特に何を言うわけでもなくいつもと変わらない。

『壱馬が、ボーカルって聞いて

すっごく納得した』

「…なんでなん？」

華奢とか言わへんよな…

少し構えたけど、そんな考えはすぐに取り払われて。

『言葉を大切にする人なんだなぁって思ってたから』

もちろん、

ステキな声だなって思ってたのもあるけどね？

イタズラに微笑んで、手元の作業に目を移した

「あんまりからかわんと」

『本当のことだもん』

.
.
.

お互いが本をめくる音と、カップが触れる音が静かに響く店内

交換しあった本を一緒に読んでいた

そしたら、

『かずまぁ』

なんて、初めて聞くだいぶ砕けた口調に何故か小さく胸が高鳴った

「どした？」

『あのね、』

言いかけたところで

prrr…

タイミングよく鳴りだした携帯
チラリとそれを確認した

『！』

さっきまでとは違くて

今まで見た事ないくらい、優しく大切なものを見るようなその眼差しに

どこか人から一線引いてしまう俺は察してしまった気がする

「出ないん？」

『…でてもいいの？』

「当たり前やん。イヤホンしとくわ」

『いいよそこまでしなくて…！』

ありがとう、そういって嬉しそうに笑った

俺はそんな顔させられへんなぁ…

何もしていない勝負に負けた気がして悔しい

『うん、封筒貰った。

…早いほうが私も嬉しい、』

踏み込めるものなら、その手にある封筒のことも電話の相手のことも聞いてしまいたいけど、そんな図々しさは持ち合わせてない

Aのこと、そんな知らへんもんなぁ…

電話を終わった顔が

悔しいくらいに可愛い顔してる

「なぁ、A 」

『ん？』

やっと俺に向けられた顔

ぱっちりとした二重とふっくらした唇
形のいい鼻

俺、面食いか？

「連絡先、交換せぇへん？」

飯に誘えたらどんなに良かったか

それでも、

これを言い出せたのは大きな進歩であることに変わりない

…