End of Line 【登坂広臣】 (ページ36)

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…

言ってしまいたかった

楽しい空気を壊しちゃうかもって思ったけど、彼には少しでも聞いて欲しかった

触れてるところから伝わってくる体温が、暖かくて緊張して冷えちゃった私の手にはちょうどいい

『いつか、

私の作った歌を、歌ってくれますか？』

アングレカムの歌は、自分と小竹さんで作ったものだけで出していた。

もっとこうしたい、っていう気持ちは会社の意向で、反映して貰えなかった。その事で小竹さんにも謝られたのを覚えてる。

「俺のために作ってくれるの？」

『臣くんのために、作りたいの』

もう一度、歌いたいと思わせてくれたあなたに。

東京を歌ったあなたに。

あの時みたいに優しく手の甲を撫でる臣くんの手。
もう片方の手が、
ゆっくりと私の頬を撫でるのが心地よくて、ゆっくりと瞬きした

穏やかに流れる時間が心地よくて、離れたくないって思っちゃう

「 … つぎ、いつ会える？」

わたしよりもずっと寂しそうな臣くんの表情に、胸がキュンってなった。

もう帰る時間になっちゃたんだ

『 … すぐにでも。』

離れたくないよ

寂しい

… 言えない。たくさんの人に応援されてる彼を、その人たちから奪うようなマネできない…。
愛されてる彼を独り占めにしたら、きっと本当にバチが当たる

「そんな顔する？」

『 … どんな顔、、？』

困ったような顔の臣くん

「 … キス、したくなる顔」

ツーッと優しく唇が撫でられて、

その手に意識が奪われた刹那

『つ、』

キスってこんなに優しい、の…？

一瞬なのにずっと甘いその時間がたまらなくて

『おみ、く』

「そんな可愛い顔、他のやつに見せないで」

言葉をさえぎって

また重なった体温が、ゆっくりと溶け合った

バチが当たるその時は

ちゃんと、受けるから。

撫でるように髪に添えられた手が心地いい

ふわふわする感覚に

苦しいのほどに鳴る心音が彼に聞こえちゃうんじゃないかって

余裕そうに笑う彼に、

過去の出来事なんて忘れてしまいそうになった

…