End of Line 【登坂広臣】 (ページ35)

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『ちょっと、色々辛くて

________逃げちゃった』

あえておちゃらけたように笑うのがいじらしくて、手を引いて、隣に座るように促す

大人しく座ったA
俺が握ってる手を少しだけ握り返した

『 … 覆面アーティスト。天使の祈り。ロボット。お人形さん。あやつり人形。』

全部、私の呼び名だよ？
多すぎるよねって自傷気味に笑った

『色んなことが

いっきに重なって

… いっきに失って

当たり前だった人が、環境が、わたしじゃどうすることもできないまま無くなっちゃった。

ファンのみんなのことも、怖くなって

勝手にパニックになっちゃって、おばあちゃんの所に逃げたの。

でも、このお店は私の知らないうちにアーティストの人が集まる場所になって。

テツヤさん、ナオトさん、臣くん。

そして最近は、隼くんに玲於くん、ヒロさん』

「っヒロさん!?」

『ふふ、不思議だよね』

マジか…

全然気づかなかったし、結構みんな来てんだな。

『あー、逃げても逃げても音楽ってついてくるんだ、呪縛みたいって』

呪縛

確かに間違ってないと思った

俺も、疲れてしんどいってなっても音楽ってどこにでもあふれてて、ずっとついてくる。

『でも、だからこそ臣くんに会えたんだよ』

疫病神と呪縛が繋いだ運命
ロマンチックじゃない？って笑ってる顔は、さっきよりどこか晴れ晴れしてて、

『臣くんの歌を聞いたら、久しぶりに歌いたいなって思ったんだ』

「えっ、…俺？」

『そう。

ゲネプロ聞いたときに

素直に歌いたいと思えたんだよ』

上手く言えないどうしようもない気持ちが溢れてきてて、どうしていいかわかんねぇ

なんて言うのが正解なわけ？

『ヒロさんが、歌う環境を作る協力をしてくれることになったの。』

えっ、… 環境

それって

『LDHに所属はしてないよ？』

「ぁ、あぁ…そう、だよな…」

俺の気持ちを読んだみたいに帰ってきた答えに、少しだけ肩を落とした

『まだ、歌えるか、分からないから…

でも今度は私の意思で、私ためとおばあちゃんのために。それと、

…もし、応援してくれる人がいたら

その時はその人たちのために歌えるようになりたいな…』

小さく震える手に気づいて、ぎゅって握った。

…