End of Line 【登坂広臣】 (ページ21)

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東京ドームに着くと、ファンであろう女の子や男の子達で溢れていた。みんな頬に名前が書いてあったり、メンバーカラーかな？カラフルな色の服を着ている。

その数に圧倒的されながら、恐る恐る関係者入口に向かった

『…すみません、これは…』

警備員の人に、それを見せると会釈をして丁寧に通路を教えてくれた。

普通のチケットじゃなくて、関係者しか貰えないらしい。私はあまり違いが分からなかったけど。

バルコニー席って言うのかな…

詳しく分からないけど、ドーム内の中段辺り。

スモークがかってるけど、まだお客さんが誰も入っていない会場は、昔の自分の時のライブを彷彿とさせた

今日、この席は私だけ。

そう聞いていたけれど、後ろにがっしりしていて髪をピッチリと結わえた男性が隅に腰をかけ、会釈をした

関係者の方、だよね…？

失礼のないようにと会釈を返した。

「臣の、…登坂のご友人の方ですか？」

まさか声をかけられるとは思わず、反応が遅れる

『…はい…？』

(ご友人…って答えてよかったのかな)

「…登坂の歌はどうですか？」

『どう…ですか？』

「関係者であると、どうしても贔屓目で見てしまいやすいもので…」

優しくて微笑んだその人は、ゆっくりと歩いてきて、一つ隣を空けて腰掛けた

『… 軽く聞こえてしまうかもしれませんが…
人の心を揺さぶる歌を歌う人だと思いました』

「…どうしてそう感じたのですか？」

『…私が、彼に揺さぶられたからです。』

「あなたを揺さぶった歌？」

驚きを含ませた声音

チラリと表情を伺うと、さっきみたいな優しい瞳が私を映していた

『…歌が、怖いんです

ここ数年、それがあり祖母の家に逃避していました』

膝の上の手をぎゃっと握った

会場にお客さんが入り始めたのか、人影が見える

『…観衆の目が向けられるのも、

歌うのも

人といることも怖いんです』

「……」

『何もかもから逃げた私は、彼らに近づいていること自体も罪なんだと、思います』

開演までのカウントダウン10分が、ステージスクリーンに映し出された。

『…でもそれは、許されないのではなく私が許されたくないだけなんだと、思いました。

それは、祖母の言葉で実感しましたが、登坂さんの歌を聞いて、

また、

歌いたいと、思いました…』

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