End of Line 【登坂広臣】 (ページ17)

今日:21 hit、昨日:4 hit、合計:162,236 hit

17 ページ17

…

登坂さんに連れられて、アリーナから関係者通路に入った。その先は、自分も何度か見たことがある、控え室が並ぶ通路

『っ登坂さん、こんなとこ… 』

「ん、大丈夫。みんな待ってるよ」

『っえ、』

「…俺が一緒にいるよ」

少し前を歩いてた登坂さんは、振り向いてイタズラに笑ってまた前を向いてしまった

なんてズルい言葉を使うんだろう

バクバクしてる心臓に気づかないフリをして、彼の後を追った

「戻りましたー」

「あー！待っとったんやぞ！はよ写真撮るでー」

「臣、マッサージ最後ね」

「臣さん！会えました！？」

「ちょ、岩ちゃん声でかい」

ドアを開けてすぐ、仲間に囲まれた登坂さんが見えて、ついていく足をピタリと止めた

…なに、浮かれたことしてるの。

彼らの優しさに浸ってたら、感覚が麻痺する

『帰らなきゃ…』

引き返そうと踵を返した途端、デジャブ。
パシッと掴まれた手に腕を引かれて、バランスを崩しながら後ろに倒れた

来るって思ってた衝撃は来なくて、代わりに優しい体温に包まれた

「ごめんっ、大丈夫？」

『っ、大丈夫です、、』

また違う意味で、バクバクの心臓を抑えた

ふわりと違う香りがして、あ、いま…って状況を理解しはじめて、バッと彼から離れた

「あー…急いでた？」

『そういう、ワケではないんですが…』

申し訳なさそうに眉を下げた登坂さん

確かに、メンバーが会いたいって言ってたのを連れてってくれた登坂さんに申し訳ないよね…

「怖い？」

ゆっくりとしゃがんで、私の手を取った
親指が優しく手の甲を撫でる

小さく頷いたら、ふわりと笑って

「また今度にしよっか」

そういった

あまりに優しくて

『ごめん、なさい…』

視線を足元に落とした

人に会う勇気すらなくて、彼の大切な仲間に会うことにすら怯える自分が情けなかった

「ゆっくりでいいんだよ」

会って数日

わたしは彼の何かを知っているわけじゃない

私のことも、何もうちあけていない。カフェのオーナーってことしか知らないはずなのに、

どうしてこんなにも優しくしてくれるの___

それでもその日は、優しさに甘えて

登坂さんに連れられたまま、すぐにテツヤさんと一緒にカフェへ戻っていた

…