102話 ページ2
まだ乾いていない髪を乱雑に結んで歯を磨く。
正直、リフレッシュなんてするどころの騒ぎじゃなかった。
幹部の奴らに、なんと言えばいいのだろう。
反省と後悔の念は渦巻くし、記憶がないですとも言えない。
かと言ってずっと黙っていることだってできない。
悶々としながら歯磨きを終え、冷たい水で顔を洗った。
水は逆上せた顔で蒸発してしまったかのように、冷たさを微塵も残さずに流れていった。
zm「何からすればええんやろ…。」
指輪を買う？いや、結婚してくれるかなんてわからないんだからそれはだめだ。
でも万が一子供ができてたらどうだろう。
多分めちゃめちゃかわええやろ。
いや、絶対に可愛い。
だってAの目とか鼻とか口とかあの華奢な感じとかを受け継ぐわけやろ。
可愛さ以外の道が見当たらない。
そうなったら、憧れの「いい父親」になるしかないやろな。
そんな妄想をしながら部屋から出て、Aの部屋の前で少しだけ立ち止まる。
部屋の中からは一切音が聞こえない。
きっと、まだ風呂にでも入っているんだろう。
ut「お、ゾムやん。おはよ。部屋の前で出待ちは流石に気持ち悪いで。」
zm「大先生か、お前何しに来たん。」
部屋の中から物音がしないかと思っていると、煙草をふかしている大先生が話しかけてきた。
まったく呑気なやつだ。
こっちは困惑と憧れとで頭の中がごちゃついてるというのに。
ut「一服ね。ゾムは何かあったん？」
zm「いやなんもないで。」
ut「ふぅん。」
大先生は、普段はあまり合わせることのない深海のように深い青色をした目で俺を見つめた。
一瞬だけ、その色が真っ赤に変わった。
ut「え！？Aちゃんとやったんかお前！こ、子供おるの！？まじで！？」
zm「ちょ、能力はそういうところで使うものじゃないやろ！お、お、お前っ！」
ut「え、なになにどういう事？もう子供おるの？」
少しテンパった様子で質問ぜめをしてくる大先生は、真剣な表情をしている。
こいつは、俺の考えているところのどこまでを読んだのだろうか。
ut「外で、話そか？」
zm「うん。」
先に歩き出してしまった鬱の背中からは、感情を一切感じなかった。
それは、こいつが感情を隠すのが上手いから。
鬱は、自分が自らの能力故に、あらゆる人のことを知りすぎてしまったんだろう。
だからきっと、感情を出すのが怖いんだ。
彼によって開かれた扉から、草花の匂いが風に乗って運ばれてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 437人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「軍パロ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風太(プロフ) - ダリア太郎さん» わわわ待っていてくれてありがとうございます、、、作者多忙でしてひと段落着いたらまた更新するかと思われるので気長に待っていて貰えればと思います(´∩ω∩｀) (2020年6月22日 23時) (
レス) id: 1ce02552d8 (このIDを非表示/違反報告)
ダリア太郎 - 更新しないんですか（ ｉ _ ｉ ） (2020年6月22日 22時) (レス) id: db84d391e7 (このIDを非表示/違反報告)
風太(プロフ) - ぱんさん» どうぞ！！！（輸血パック） (2019年9月4日 7時) (レス) id: 68876f6c16 (このIDを非表示/違反報告)
ぱん - 何してくれるんだ！鼻血がとまんねーよ！ (2019年7月24日 20時) (レス) id: afe6fa3e2d (このIDを非表示/違反報告)
風太(プロフ) - あっぷるさん» コメントありがとうございます！！！更新頑張ります！！！ (2019年4月7日 9時) (レス) id: 4133c0f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
