【w.r.w.r.d.!】クリーパー少女拾いました2【zm】

97話 ページ47

gr「なぁA！ここでフルートを吹いてくれないか！」

『……はい？』

グルッペンさんは肩で息をしながらそう言った。
手には、昨晩のフルートが入った木箱を持っている。

彼はぐいぐいと進み出てきて、私の手に木箱を押し付けてきた。
木箱の中には、昨晩と変わらない古びたフルートが入っていた。

『でも、上手くないので。』

gr「上手い。Aのフルートは、すごく上手い。」

『……窓を開けてもいいですか？』

gr「あぁ。」

グルッペンさんが開けた窓の近くに立ってフルートに息を入れた。
昨日のように、息はすぐに管を伝って音となった。

外の匂いがする。
草や花の匂いがする。
動物たちの匂いがする。
森の、匂いがする。

風の音がする。
葉の擦れる音がする。
動物たちの音がする。
森の、音がする。

また、懐かしい曲を吹いた。
どれくらい吹いているんだっけ、誰に聞いてもらっているんだっけ。

誰かに会いたいのに、誰に会いたいのかはわからない。
この曲は終わらない、そう、誰かが言っていた気がする。

この曲は

『すみません、長く吹きすぎてしまったかもしれないです…！』

tn「ぐ、グルッペン、これって」

gr「そうだ。」

ぶわっと風が吹いて、みんなの髪を揺らした。
風とほぼ同時に大先生とシッマが食堂に戻ってきた。

ut「なぁ、今フルート吹いてたの誰？」

gr「Aや。」

大先生は、私の手に握られていたフルートを一瞥すると目を丸くして叫んだ。

ut「そのフルート……あぁ、そういうこと。」

『どういうこと？』

ut「ん？いや、なんでもないで。」

大先生は小さく頷くと、席に戻ってしまった。

木の箱にフルートを戻してグルッペンさんに渡すと、グルッペンさんは木箱を私に押し返した。

gr「Aが良ければなんだが、これはプレゼントする。」

tn「っ、おいグルッペン、」

gr「俺が良いと言っただろ？A、受け取ってもらえるか？」

グルッペンさんにまたNOとは言えない雰囲気を醸し出され反射的に頷くと、木箱が少しだけ温かくなったような気がした。

『…あれ？この箱、』

gr「どうかしたのか？」

『少しだけ温かくなった…？』

gr「そのフルートは、Aに貰ってもらえて嬉しいんだろうな。」

今度森に行ったら、このフルートで





私は、





何を吹けば良いんだろう。





私は、





何の曲を演奏していたんだっけ。

98話→←96話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す