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昔の記憶─貴方目線─ ページ5

ちゃんぷん、とタイル造りのお風呂に肩までつかる。


「はあ……」

「どうしたA、ため息なんかついてよお」
シロさんが私のため息に反応する。
ちゃっかりタオルを頭にのせて、気持ち良さそうに目を細めていた。


「うーん、ちょっと昔のこと思い出しちゃって……」

大きなため息をまたついて、私は自分の体を抱きしめるように掴んだ。


「私、実は危険図書を読んだことがあるんだ」

シロさんに語りかけているつもりではなく、昔のことを懐かしむように、私は軽く目を閉じる。


「小さい頃、お母さんの部屋で小さな本を見つけて読んだの。
『クラスメイトが全員お兄ちゃんなわけがない』よりもずっと薄い、すぐ読み終えちゃう様な本だったんだけど、私はそれに夢中になった。

思えばあの場所で、ページをめくったあの瞬間から、私はあの本に──魅了されていたのかもしれない」


生まれて初めての感動を、高ぶる胸の鼓動を、私は思い知った。



「何でお母さんが危険図書を持っていたのかとか、そんなこと今となってはもう分からないけど、でも初めて読んだあの本を見たときの感情が、今でも忘れられなくて……」

「──また、読みたい、か?」


黙って今まで聞いてくれていたシロさんが凄惨な笑みを浮かべて問いかけた。

私はその言葉に、力強く頷く。



「──また、読みたいなあ」

あの本は、どんなお話だったのだろうか。

今ではもうほとんど覚えてないけれど。






あの時に抱いた感情は、今でもずっと覚えてる。

寝床─貴方目線─→←危険図書を読もう



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作者名:中学生なのに暇人 | 作成日時:2014年9月7日 22時

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