物語を知らない子供たち ページ13
「じゃ、新学期も勉学に励むように」
役目を終えた蝶番先生が、その長身をかがめながら教室から出ていった。
姿が見てなくなると同時に、クラスではテロリストの話題になった。
「怖いわよねーそんな奴が同じ学校にいたなんて」
「ああ、巻き込まれなくて良かったな」
(違う、間違っている、なぜだろう、こんなときに昨日の青年。璃里理を殴った男──
「なんでそんな変なものにはまっちゃう人がいるんだろうねー」
「さあねー」
『異常だとは思わないか?一組織如きが国の実権を掌握し、表現の全てを制圧しわ善悪の判断を全て司っている現状。そんな異常に──何も疑問を抱かない国民そのものが』
「はまっちゃいけないわよね、そーいうのって」
「そうそう、九縷々烔って弱い子だったしね。怖い怖い」
『《心》その本質を忘れた人間が口にする「怖い」など、赤子が火の熱いのを知らないと同じくらい哀れなものだろう?政府は恐れているだけだ、感情という制御不能の荒波を』
(そんなのは絶対違う)
「捕まえてくれて、よかったわ」
『本当に絵を描くことが、迫害されるほどいけないことなのかと。歌を歌うことが、物語を綴ることが──夢をみることが、裁かれるべきことなのかと』
(やめろ、お前らやめてくれ)
『本当は自分じゃなくて世界の方が──間違っているんじゃないか?と』
「そんなの違ッ……」
「クロネッチ!」
──黒音が気がつくと目の前で咲夜が両肩に手を当て、強く体を押さえていた。
その隣にはAが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「さ、咲夜……?」
「今、何を言い出そうとしていたの?」
「え、いやその……」
「やめてよクロネッチ……本当にそういうの……」
「い、いやだから……」
「君はそんなこと論じちゃいけないし、考えちゃいけない」
それでいいから、と力強く付け足した。
「色々あってクロネッチ、疲れてるんだよ……」
「で、でも咲夜……」
「昼休みに一階の男子トイレで。もう授業始まっちゃうから」
そう小さく呟いて、咲夜は自分の机へと歩いていった。
「恋失……」
小さく呟くAに、黒音は力なく笑った。
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作者名:中学生なのに暇人 | 作成日時:2014年9月7日 22時