【文スト】青い瞳の人形【完結】

抗力 ページ29

森の言葉にはっとした敦は黒い扉を見る。

その奥には芥川に捕らえられたときに必死で助けるよう説得してくれた谷崎兄妹と情報収集をして呉れた宮沢賢治が居る。

他にも自分の所為で捕らえられた関係の無い市民も。

今回は自分が助けねば。

そう決心した敦は森からリボンを受け取り、モンゴメリをみる。

「お話はおわり？

やる気は戻ったかしら

そうでなくちゃ面白くないわ」

モンゴメリは嬉しそうに微笑む。

「でも終わりよ」

モンゴメリの言葉と同時に何時の間にか消えていたアンが敦の足下から出てきた。

驚いた敦が慌てて捕まらない様に跳躍するも、その真上にももう一体のアンが。

「もう一体！？」

「そちらは二人なのだから当然でしょ？」

アンの手が敦の胴を掴む。

扉が開き、中から無数の手が延びて敦を掴み、中へと引きずり込む。

扉は勢い良く閉じた。

任務を完了したモンゴメリははしゃいで、またペラペラと喋る。

沙羅はモンゴメリに近付こうと一歩を踏み出し掛けて止まった。

同時に森が膨大な殺気を放つ。

モンゴメリは足をすくませ、その場から動けない。

アンでさえも、動けずに居る。

「無理だな。

何故なら君等は既に負けている。

見るといい」

森はそう云って敦が消えた扉を指す。

扉がぼやけ霞み消える。

そして扉があった場所には手足を虎化させ、中へと引きずり込む力に耐えている敦が居た。

「どうして

扉は確かに閉まった筈なのに！」

モンゴメリは信じられなくて叫ぶ。

「君の見落としは一つ。

この戦いは最初から二対一だ。

ドアが空いた瞬間に谷崎さんの『細雪』で扉の映像を偽装した」

「そんな・・・・・・

その上部屋へと吸い込む力に腕力だけで抵抗したの？

そんなこと出来るわけが」

モンゴメリ達は資料で谷崎の異能力は立体映像の異能だと知っていた。

だから異能を遣われる前に捕らえたのだ。

真逆敦に腕力だけで抗うほどの力があるとは露ほどにも思っていなかった。

束縛→←逃亡

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