泡沫の夢であれ【ヒロアカ】 (ページ27)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:18,416 hit

Ｎｏ．１０ページ27

一人の女子に声をかけた後は、もうあっという間だった。
だってさ、ロボット一体倒すたびに誰かがぶっ倒れるんだもん。現役ヒーローとしては助けるしかないじゃんか！

まぁ流石に受験生としては試験妨害みたいなものだから、声をかけて反応があればとりあえず影の方に、反応がなければギンを走らせて入口付近に避難させてる。

そんなこんなしていると、巨大地震…否"ギミック"(圧倒的脅威)が現れる。

別に緑谷出久のようになりたい訳じゃないため、影に避難させた人を連れて逃げようと思った。

…が、いる場所が悪かった。ちょうど入口に背を向けるようにギミックが出てきたのだ。

怪我人が一人であれば最悪一緒に連れていくことも考えたが、残念ながら今いる怪我人の数は6人。そのうち歩けそうな人は2人と絶望的状況。

それに加わりギミックが動き回るおかげで、瓦礫による二次災害も考えられる。

いつもなら『空間』と『消去』を使ったゴリ押しもできたけれど、今は『風(ギン)』しか使えないため無茶はできない。

意地の悪い設計に思わず舌打ちが零れそうになった。それを無理矢理飲み込んで、微笑みながらギミックを見つめる。

さぁ、どうする。希求A。

「な、なぁ。」

頭をフル回転させ作戦を立てていると、人混みから逆走して声をかけてきた少年…つまるところ、切島鋭児郎が自分に声をかけてきた。

…そうだ、そうしよう。

「君の貴重な時間を貰うことになってしまうんだけど…。少し、手伝ってくれないかな？」

手を差し出し、図々しいとは思いつつも提案をしてみる。これが断られたら…その時考えよう。

切島鋭児郎は少し呆けた表情になったが、そのスグあとに綺麗な笑顔を見せてくれた。

「…勿論！元々そのつもりで声掛けたんだ。」

ありがとう、と言ったあとの少し照れたような顔が子どもの面影と少しダブったような…。

いや、今は試験に集中しなきゃ。そうじゃなきゃ、声をかけてきた切島鋭児郎にも失礼だ。そう思い、すべての思いを隠すように笑顔を貼り付ける。

切島鋭児郎に瓦礫からあそこにいる怪我人たちを守ってあげて、と簡単な指示を出し、自分はギンに飛び乗った。