拾肆話 ページ16
グサリ、と矢が刺さる音がする。でも、その音を出しているのは自分の体ではなく、子どもの…子どもの？
「…？」
どくどくと流れる鉄臭い液体の出処を探れば、子どもの背中から流れてきていて。
その子どもは幸せそうに微笑みながらこちらに倒れてくる…？
「…ねぇ、ねぇ。」
いくら声をかけても、子どもはただ浅い息を繰り返すだけ。
「あ、あぁ…。」
なぜどうしてこんな事にそもそもなんでここに人が入ってきていてそれでこの子を殺そうとしていて今も殺気を含んだ目でこちらを睨んできていて今にも襲いかかってきそうな態度をしてるんだ個性とか関係なくお前らは、お前らは
「あぁあぁぁあああぁあ！！！！」
＿＿人として、最低だ。
自分の叫び声と共鳴して、レイ、シズ、ギンが暴れ回る。人がどんどん傷ついていることはわかっていたが、止める気にはならなかった。だって、だって。
自分の子どもに手を出したんだ。当然の報いだろう？
人間達の叫び声をBGMにしながら、自分は必死に『治癒』をする。矢を消す前にある程度治さなければ大量出血で死んでしまうことがわかったから。
もう少しで矢を抜ける。そんな時、子どもが目をうっすらと開けた。その拍子にギン達も収まる。
「そん、な顔、しな…いで。」
ゆっくりと手を動かし、自分の頬を撫でた。とても心地よかった。
それを油断と捉えた兵士が性懲りも無く、自分の左目を切りつけた。シズが水で死なない程度に叩き潰していた。
『治癒』は子どものために使っているため、今は『不老不死』の力だけで自分は回復しているから、だんだん左目が開かなくなってきた。
その一部始終を見ていた子どもはとても悲しそうな表情をしたあと、自分に話しかけてくる。
「あの…ね。僕、がいま、しんだと、して。『蘇生』だけ、は、祈らない、でくれ。」
「…何故？」
「あな、たには、もっと、多くの、ひと、を助けて、やって欲し、いんだ」
「あなた、は、僕に、とっ、て、"ヒーロー"、だったか、ら。どうか、ヒーロー、として、いろん、なひと、を助けて…あげて」
「もう、僕は、充分、いき、た。しあわせ、だった、とは、はっき、り、いえな、いけど、それでも、しあわせだった。」
彼は最後だというように、今までで一番幸せそうな顔をして笑っている。
「ごめんね、ありがとう。さよなら、
＿別れ＿
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作者名：羅氷華 | 作成日時：2018年1月17日 21時
