拾弍話 ページ14
No side
「…ねぇ」
家主がいない家の中で、蒼黒のドラゴンに話しかける中性的な青年がいた。話しかけられたドラゴンは眠たげな双眼をゆっくりと開き、頭を重そうに持ち上げる。
「僕がここにきて、10年…。そろそろ、あの人に僕の過去を話さなきゃいけないと思うんだ。だから…君で練習させてもらってもいい…？」
「寝ててもいいから、どうか聞いてておくれ。」
がる、とドラゴンは返事をするように一声鳴いた。
＿＿＿＿＿＿
＿＿＿
僕の住んでいた街は、ここのすぐ近くなんだ。名前は…忘れたけど、この山がなんて呼ばれているかは覚えてる。
確か＿＿魔女の山。そう、みんな言ってた。どう歩いてもいつの間にか山の外に追い出されてるから、そんな名前が付いたんだって。
…あぁ、ごめん。その話じゃなかったね。
僕は元々こんな角もなくて、目もこんな赤色でも何でもなかった。こんな見た目になる前までは、家族がいて、友達もいて、結構充実してた日々を送ってたんだ。
…そして、5歳になる前日。朝起きたら、こんな姿になってた。
怖くなって親に見せれば、慰めるでもなく、賛辞を送るでもなく、ただ、気味の悪いものを見たような表情をしていた。
今考えれば、当たり前だったんだよね。僕の住んでいた街では"鬼"の存在が絶対的悪だったんだもん。
でも、その事を幼い僕はわからなかった。だから、友達に見せに行った。
そしたら…。
ボロクソに言われたよ。気色悪い、近寄るな、この"鬼"め…。今ではもう霞んで顔も覚えていないけど、言われた言葉だけは覚えてる。
それからは周辺の人のストレス発散機として、殴られ蹴られは日常茶飯事で。偶にナイフで切りつけられたり。
治療なんかやってくれる人もいないから、怪我が悪化して反応がなくなってきた時に、この山に捨てられたんだ。
…ん？今はどうなんだって？
正直ね、最初は凄く怖かったけど…あの人が、僕の"ヒーロー"が。この忌々しい角を"かっこいい"って言ってくれてから、僕の人生は180度変わったんだ。
だから、今はここにこれて良かったって思ってる。本当に。
は、恥ずかしいから、あの人には言わないでね？言おうって思ったら、自分から言うからさ。
……あれ、なんだか外が騒がしいね。どうしたんだろ。
シズはとりあえず動物達を避難させて。念の為だけど…。してないよりはマシだと思うからさ。
じゃあ、見てくるね。
＿＿独白＿＿
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作者名：羅氷華 | 作成日時：2018年1月17日 21時
