玖話 ページ11
「…起きなきゃ」
他人から見たら『神様のギフト』だと言われる忌々しい"個性"を受け取ったあの日から…何百年かたった。
詳しい年は知らないな。100年超えた時から数えるのが馬鹿馬鹿しくなったからね。
まぁそのくらい長い時間が過ぎ、その時間と比例するほど沢山の出来事が起きた。
例えば＿＿家族の死、とか。
兄弟などはいないから全ての財産が自分に来たけど、どんなに大切でも自分より先にみんな死んでいく。
その事が分かってしまって、途端に怖くなった時期に両親が遺してくれた財産で山を買った。…大切な人ができないように。
そこからは早かった。会社を辞め、『空間』を使い比較的新しい実家を山に建ててギン達と暮らしを始めた。
恋人？心苦しかったけど、別れてもらった。良い関係を築いてきた人だったけど、だからこそ自分みたいな化け物ではなく、もっと素敵な人と家庭を築いて欲しかったから。
全ての関係を断ち切り、ほっと一息ついた時には両親の声が思い出せないほど時間が経っていた。
その時思い出したのが『人は二度死ぬ』という言葉。
決して何処かが飛び抜けて素晴らしかった人ではなかったけど、唯一無二の存在だったから2回も死なせてはいけないと思った。
その為に42000鼓動を支払って『記憶』を手に入れた。
…長々と振り返ってしまったな。朝ごはん食べよう。
「お、双子だったか。lucky…♪」
卵を割り、今日は良い日だなと鼻唄を歌いながら調理を続ける。
the・日本食な朝食が出来始めると、廊下から足音がした。
やっと起きてきたかと後ろを振り返れば、初めてあった時には考えられないほど成長した3匹が。
おはよう、と順番に頭を撫でていけば機嫌良さそうに鳴いていく。
それに微笑みながら出来上がった朝食をテーブルに運ぶ。窓の外の心地よさそうな天気に、今日は出かけようと思い立った。
「…後で散歩に行くからね」
3匹にそう声をかければ、喜んだように声を揃えて鳴いていた。
＿＿平和な＿＿
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作者名：羅氷華 | 作成日時：2018年1月17日 21時
