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「か、かみちゃん!俺、神ちゃんと仲良うなりたい訳やない。」
言葉の意味を、お酒で鈍った頭で飲み込むのに時差があった。
見る見る顔が曇っていく。
「そ、やんな、ごめん、シゲ。図々しかったな、」
「ちゃう。最後まで聞いて?」
両肩を掴んで悲しそうに俯いた顔を覗き込むけど、目も合わせてくれなかった。
「俺、神ちゃんのこと、好きやねん。神ちゃんが助けてくれた、あの日からずっと。俺、神ちゃんの恋人になりたい。友達じゃ嫌や。」
目を見開いて、ようやく顔を上げたから、その頬を手のひらで優しく包む。
「…俺、わからへん、」
ポツリポツリと、言葉を探しながら、ゆっくりと。
きっとそれは、俺を傷つけない優しさ。
そんなんええのに。
どんな言葉でも受け止めるし、何言われても、俺のやることは変わらない。
「俺、男の人、好きになったことないけど、ありえんとは、思わへん。今、シゲに好きって言われて、嫌な気なんか全然せんくて、、むしろ、嬉しいと思ったし、ドキ ドキもした。けど、それがシゲとおんなじ“好き”なんかは、わからへん。やから…時間、くれませんか?ちゃんと、自分の気持ち、考えたいから、」
俺が何も言わんから、怒らせたとか思ってんのか、ソワソワ落ち着かない様子で、俺のことを見てる。
ちゃうねん。噛み締めてるだけ。
俺の大好きな、優しくて真摯な神ちゃんを。
「そういうとこが、好きやねん、」
口から絞り出すことができたのは、これだけ。
きっと彼には何のことはわからないやろうけど。
人通りのない、暗い静かな脇道。
視線と視線が絡み合う。
「一回だけ、ぎゅってさせて、」
溢れ出してしまった気持ちが落ち着かなくて、どうしてもふれたくて。
神ちゃんは、ただ黙って歩み寄って、俺の胸に、頭を預けて、背中に腕を回してくれる。
「好き、ほんまに好きやねん。」
強く強く抱きしめると、ふっと神ちゃんの力が抜けた。
「神ちゃんに、絶対好きって言わせるから、」
「覚悟しとき、」
おでこになら許してくれるかな、
一度だけ、その額に口づける。
「反則やろっ、」
俺のこと突き飛ばして、おでこを両手で隠した神ちゃんの顔は、暗がりでもわかるほど真っ赤やった。
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7129(プロフ) - にんさん» 悶え苦しむ、ガタガタと壊れていく…さすがにんさんの表現力です〜!悲しむ緑くん、まっすぐ?赤くん、大人紫くん。大好物すぎます笑 投稿するのめちゃめちゃ悩んだので、そう言っていただけるだけで救われます!! (2022年5月24日 18時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
にん(プロフ) - お馬鹿さんな赤さんだ…遅いです…いや遅くはないですね、しかしここからもだえ苦しむ赤さんが堪能できるわけですね?うん、好きです。緑さんを想うあまりガタガタと壊れていく赤さんが大好きなので、続きが待ちきれないです。楽しみです。 (2022年5月24日 7時) (レス) id: 4b2b762418 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - みさきさん» 出会い編は、ドラマはないんですが、雰囲気を描きたかったのと、…言いたいけど、続編終わったら言おうっと!めっちゃ描きたいところがありまして笑 続編終了後、言い訳聞いてください♡ (2022年5月22日 5時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - みさきさん» いつもありがとうございます!大好きなこのタイプ描くたびに、みさきさんを思い出します〜♪あ、また気づいてくださった!side変えたんです。どっちの一途な感じも好きだけど、私は緑溺愛なのでつい赤目線で描きがちな気がして、あえての緑! (2022年5月22日 5時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
7129(プロフ) - エナさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎます♡こういう雰囲気の赤緑が大好きなので、気に入っていただけて最高です♪個人的にこの赤緑+桃、また描けたらいいなぁと思ってます!長編、我得!これからも読んでくださると嬉しいです!! (2022年5月22日 4時) (レス) id: f02b13cfb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:7129 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=7129
作成日時:2022年4月30日 16時