Colorful stories 3 （W.短編集）

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ほらな、やっぱり隠しとるわ。


「神ちゃん、手ぇ出して」
「ふぇ⁉︎」

返ってきたのは、手やなくて変な声。
神ちゃんって、びっくりした時、不思議な声出すんよな。笑

「バレとんで。さっき転けた時、派手に擦りむいたやろ？」

化膿するとあかんから、無理やり右袖を捲り上げて傷を晒すと、結構広範囲をしっかり擦りむいて、周りには青あざも。
色が白いから、余計に痛々しい。

神ちゃん、こういうとこあんねん。
人のことは心配すんのに、自分のことは後回し。
きっとロケを優先して言わへんかったんやろな。
神ちゃんらしいな、なんて笑ってまう。



傷口洗おうと思ってんのに、神ちゃん嫌がって、手ぇ引っ込めんねん。
子どもかっ！
もう、世話の焼けるやつ。
これが兄組なら甘えるんやろうな、なんて思うと、ちょっとイラッとして、逃げようとする真っ白な腕を引く。

神ちゃんは、勢い余って、俺の体にぶつかってきて。
神ちゃんの甘いええ匂いに包まれる。
よく知っとる落ち着く匂い。


そのまま動かへんから、心配になってきた。
たぶん泣いとる。鼻を啜る音を、背中をさすりながら聞く。
ほら、そんなに痛いんに我慢して。

早く消毒してあげたくて、肩を押そうと手をかけるけど、俺の服握りしめて離さへん。



神ちゃんが、俺の胸元で微かに震えた。


「…好き」


掠れた声で。
でも、確かにそう言った。


今までも仕事で「好き」という言葉は何度も使ってきた。
けど、これは違う。

あかん。
止めなあかん。
俺ら、シンメなんやから…


「ごめん、」
「神ちゃんは大事なシンメやし、大好きやけど、そういう好きとはちゃうくて…」

どう言ったらいいかわからなくて。
言葉を探しながら。
できるだけ神ちゃんを傷つけないように、とは思うけど、どう言っても傷つけてしまう。

神ちゃんの体温が急に離れていく。

「ごめんな、急に。わかってるから。今まで通りにしてくれたら嬉しい」

健気に笑う神ちゃんを見ると胸が苦しくて、思わず目を逸らした。



そこからロケバスを降りるまでは、あんまり覚えてない。
何も考えられんくて。
神ちゃんから逃げるように、背中を向けて、寝たフリを続けた。
背中に神ちゃんを存在を感じながら。

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