西の探偵が恋をした (ページ10)

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「東の組織の人やんな？」

ハマちゃんが、切り出した。
警察もずっと追っている、大きな組織。

「なんで組織に？」
「はい。物心ついた時にはそこにいました。なんでかは…わかりません」

おそらく親が幹部やったか、もしかしてだけどたら売られたか。
言いたくないのかもせえへん。

「ハッキングとか、尾行とか……色々…全部、叩き込まれました」
「けど、実際手は下さへんかってんな？」
「やらなかったんじゃなかった、できなかった。やり方はわかるのに、どうしてもできなくて」

嗚咽混じりになっていく声、拭っても間に合わないポロポロと流れる涙。
俺の方が耐えられなくて、胸に押し当てる。

「ええと思うで？」
「おん。カミちゃんは、間違ってない」

「カミ、ちゃん…？」
「神山やから、神ちゃん。ええやろ？」
「ええなぁ！俺も神ちゃんて呼ぼーっと！」

流星の言葉に、ハマちゃんの方がはしゃいでる。
“神ちゃん”本人はというと、困った顔でじーっと俺の顔見てる。

生まれたてのひよこちゃんみたいなもん。やもん。
さっき、こっちの世界に初めて身を置いた彼は、戸惑うたびに俺の様子を伺う。
それは彼の苦しい生育歴からやってわかってる。なのにその度に庇護欲引っ張り出されて、俺は苦しいやら愛おしいやら…