西の探偵が恋をした (ページ39)

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「お前が言うことを聞かないんなら、言うことを聞かせるだけだ」

「シゲオカ、と言ったか」

俺の名前を聞いて、冷静沈着だった神ちゃんにわずかな揺らぎが生まれた。

「人一人のために、弱くなったもんだ。どうする？お前が戻ってくるなら、シゲオカのことは、二度と狙わない。約束しよう。」

「ほんまやな
「アカーーーン！！！」

背後でため息が聞こえる。
インカムの向こうからは、淳太の“アホ”も。
淳太、実はツッコミ向いてると思う。

振り返った神ちゃん。
目の前には、今にも泣きそうな顔。

「お待たせ」
「何でっ…何で来たんですか…っ、」
「会いたかったくせに」
「会いたかったけど…！」

予定では俺らが乗り込む時間は1時間後。
神ちゃんがこちらの動きを全て把握していたとすれば、想定外やったはず。
それまでに全部終わらせとくつもりやった。自分を犠牲にしてでも。

ビンゴやろ。

「この子は渡さん。俺も無理。諦めや？」
「僕も。しげさんは渡さん。僕は、しげさんと帰る」
「ほら。な？俺といたいねん、神ちゃんは」

目が合う。
その目が、
一緒に帰ろ、そう言うてる。

頷けば、鋭い目を敵に向けた。

「覚悟、できてんねんな？ボス」

そう言い放つと、神ちゃんがふわりと笑った。
ゾクリとするほどに、美しく。