西の探偵が恋をした (ページ30)

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「ただいま…帰りました」

事務所の扉が開くや否や、聞こえた声。
待ってた、愛しい人の姿。
いくつもの“おかえり”が飛び交って、神ちゃんの顔にいつもの笑顔が戻る。

「望もおつかれさん。ありがとな」
「神ちゃん、楽しかったな？ドライブデート♡」

むぎゅうっと後ろから抱きしめられれば、満更でもない顔。

「ほら、神ちゃん！しげ、待っててんで？モンチがおらん間一言も口きかへんかったし。お〜怖い怖い！早よ何とかしてや」

背中を押されて、俺の目の前に立つ。
我慢できひんくて顔を上げると、変わらない穏やかな表情で、めちゃくちゃホッとする。

「しげさん」

「ただいま帰りました」
「ん」
「母も喜んでくれました。生きてたことも、今幸せやってことも」

「母にも認めてもらいました。しげさんとおること」

「だから…ここにいても、いいですか？」
「当たり前やんっ！」

「ずっとここおって！絶対離れたらあかん！」

「神ちゃん！約束やからな？」
「ふふ。はい、約束します」

「一生、しげさんといたいです」

差し出された小指。指切りげんまんなんて、小学生の頃にもやった記憶ない。

それなのに…

戸惑いつつ差し出した小指。

繋いだところから、神ちゃんの気持ちが流れ込んでくる。

一緒にいる、幸せ。
みっともなく、涙と鼻水を流しまくる俺を、神ちゃんは嬉しそうに抱きしめてくれた。