西の探偵が恋をした (ページ28)

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しばらく誰も何も言えなくて、

鼻を啜る音がして、

「捨てられてへんかった…」

「よかった、」

はぁ〜
おっきく息をつくと、その場にしゃがみ込んだ。

「まじか」
「とりあえず、まずはよかったな」
「会いに行こう」
「せやな、それがええ」

戸惑いを隠すことなく、笑うメンバー。

「送ろか？」

ハマちゃんの提案に、

「これからのんちゃんが連れてってくれるそうです」

「母に会って来ます」

涙を拭いながら2階に駆け上がると、バタバタと足音が聞こえてくる。

「しげ」
「行かんの？」
「うん」
「知ってた？」
「うん」
「どうすんの？」
「決めるんは神ちゃんや」

「俺やない」

腕を組んで、目を瞑った。
そこに、階段を降りてくる音。

「行ってきます」

各々返事をしたり手を挙げたり。
俺は、何のリアクションも取られへんくて。

ゆっくりな足音が、俺の前で止まった。

「あの…」

降ってくる声に目を開けば、窺う様子で俺を見下ろしている神ちゃん。
新品の革ジャンを羽織っただけ。手ぶらのまま、とても出掛けるようには見えない。

その表情は、穏やかで、もう涙の跡だって見えない。