西の探偵が恋をした (ページ26)

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「神ちゃん、行方不明者リストに名前があった」

「神山智洋、兵庫県出身。当時7歳、小学一年生。下校中に行方不明になってる」

「で、お母さんがご存命や」

「どういうことか、わかるよな」
「おん」
「ええの？」
「しゃーないやんけ。俺は家族やない」
「けどっ！」

小瀧が掴みかかってきた。

「お前、そんな淡々とよう言えるな！」

「お前っ、神ちゃんはさっ、」

「お前のことが…っ、」

言葉に詰まる。
きっと、涙堪えてた小瀧より、俺が先やったから。

「しゃーないねん。あの子は、ちゃんと自分の人生取り戻さなあかん。それは、俺とやなかったってことやろ」

「わかってたから、お前もこっそり電話くれてんやろ？」

「ありがとうな？小瀧」

「優しいお巡りさんや、お前は」

「なんかあったら雇うから、いつでも来いや？」

「なんかあったら困るけどな」

襟元を掴んでた手は、いつのまにか机の上で固く握られていて、
ボロボロと涙を流している。

どこか、映画でも見てるような、感情をどっかに置いてきたような気持ちで、それを見てる俺。

「なぁっ、何とかしてやっ、」

「お前っ、ボスやろ⁉︎しげやろ⁉︎なぁっ、」
「お前、ほんまええやつ、」

俺のために、神ちゃんのために泣いてくれる、優しいやつ。

おかげで取り乱すこともなく、
嘘ついた手前、飲みたくもない酒を煽って神ちゃんの待つ事務所兼自宅に戻る。