西の探偵が恋をした (ページ23)

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車を走らせて30分余り。
着いたのは、郊外の俺の地元。
事務所のメンバーすら誰も知らない俺の実家は、今は空き家になってる。

正直ええ思い出なんて一個もないけど。
裏は山になっていて、桜が咲き乱れている。好きな子に見せたい景色の記憶だけは、初めてありがたいと思った。

「うわぁ…きれい…」

呟くと、見上げたまんま、時が止まる。
風に乗って散り始めた桜の花びらが、ひらひらと神ちゃんを彩る。

景色なんてほんまは興味ないし。
景色見る時間なんて無駄やと思ってたし。
けど、初めて知った。
神ちゃんと見る景色は特別に綺麗で、神ちゃんと景色を見る時間は特別に幸せな時間。

いろんな世界、見せてやりたい。
この世界も、ええもんなんやでって。
キレイなもん、いっぱいあるんやでって。
それで、神ちゃんがこの世界を愛してくれたらええなって。

「ここ、俺が子どもん頃育った家やねん。住んどったんは、中学までやけど」
「え、」

台風でよう倒れへんかったなってくらいのボロ屋敷に、めちゃくちゃびっくりした顔してる。