西の探偵が恋をした (ページ3)

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息を吸うと、

「残念やったな！綺麗ぇぇな兄ちゃんなら、返り討ちにしてやったで！」

「ご愁傷様ぁ！！」

大声でうそぶいて、インカムのコードをおもっきり引きちぎってやる。

まん丸の目からぽろりと雫が落ちて、

俺を捉えた。

手を握る。
真っ白な肌とは似ても似つかないタコだらけの、ガサついた手。

「行こ」

この子を助けろ。
俺の直感がそう言ってる。

そして、

俺の直感は、外れたことがない。

「大丈夫やから。俺が守ったる。」

「兄ちゃん、一緒に行こ？」

彼は、また泣きじゃくった。
今度は、子どものように声をあげて。

抱きしめる。
この腕から、体から、
俺の思いが伝わるように。

気配を感じた。
それと同時だった。彼の体が硬直して、嗚咽をまた飲み込んだ。

振り返ると、入り口にハマちゃんが立っていた。

仏様みたいな顔で頷くから、

警察が来る前に、廃ビルから隠れるように逃げ出る。

彼の手はしっかり握ったまま、

事務所までの長い距離をひたすら走り続けた。