Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ8)

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「飯食ったら、午後は3件回るからな」

カップコーヒーを手に自分の席に座ると、のんちゃんが椅子の背もたれに崩れ落ちた。

「緊張…してきました、」
「のんちゃんなら大丈夫！絶対大丈夫やから！」

背中を叩くと、あからさまにご機嫌な顔。
わかりやすく褒められて伸びるタイプののんちゃんは、せっかくのイケメン台無しにして鼻をヒクヒクさせている。そこが憎めないところ。

飲み込みもええ上に、やる気もある。
しかも、褒めればそのやる気は俄然アップする。

単純というか、かわいいというか。
扱いやすすぎる。笑

「さ、まずは午前中、ここまでがんばろな？」
「はいっ！」

きゃんきゃん飛びつかれたところで、

「と〜も！おは…」

振り返ると、課の入り口で固まってる大ちゃん。

「え、社長？」

耳元でのんちゃんの驚く声。
できれば、この体制のまま固まるのはやめてほしい。
でもまあ、そうよな。社長が突然こんなとこに現れたらびっくりするか。

「とも…」

「って！お前誰やねんっ💢」
「え…」

大ちゃんがすんごい顔して、のんちゃんを指さしている。
くすくす笑い声。
うちの課の名物を知らない新入社員たちだけは固まってしまった。