Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ48)

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最後までぎゃあぎゃあうるさいアイツの声が遠ざかって玄関の扉が閉まると同時に、
猛ダッシュで部屋という部屋を覗いていく。

めっちゃ家中荒らしまくってやろうって張り切ってたのに。
エロ本でも見っけて茶化したろうって思ってたのに。

ほんまに人住んでんの？ってくらい、広い家には、生活感が全くない。
食って寝るくらいしかできないであろう、この家。
あんな楽しそうで賑やかなヤツが、そんなわけない。
ぜーったい何か隠してるやろ！

押入れの奥、

引き出しの中、

布団の隙間、

屋根裏、

庭の隅々まで見て回っても、弱みどころか、娯楽品の一つも見つからない。

アイツ…

どんな暮らししてんの⁉︎
やっぱわけわからへんやつ。

おもんねー。
諦めつつ、最後に見つけた一番奥の部屋を覗いてみる。
襖をすり抜けると、6畳ほどのこじんまりとした和室だった。
綺麗に掃除の行き届いたそこには、

立派な仏壇と、
古びた写真立ての、一枚の写真。

その写真には、両親とその子どもであろう男の子が、眩しいくらいの笑みを浮かべている。

黒髪に真っ黒な瞳、

めちゃくちゃ綺麗に並んでる歯、

その楽しそうな笑い方。

この子、まんまアイツやんけ。

そっか。
そういうことか。

腑に落ちたと同時に、苛立ちと虚しさに包まれる。