Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ35)

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かわいい。
ほんまにかわいい。
めちゃくかわいい。

接客してるところも、
コーヒー作ってるところも、
お客さんに向けた笑顔も。

見惚れてれば、

「あっ」
「え」

ふと目が合って。
一瞬固まったカミチャンは、何事もなかったかのように“お客様への”笑みを浮かべてまた動き始めた。

絶対バレた！気づかれた！
カッコ悪いけど、どこか嬉しい気持ちが湧いてくる。

その後も、ぎこちない彼を見てれば嬉しくなるわけで。
ついついじっと見惚れ続けてたら、

「わっ…あつっ」

アホなことにカップを倒してしまって、
飲み口からとぷりとコーヒーが流れ出てしまう。

慌ててカップを起こすも、テーブルに広がる茶色い池。

「だっ、大丈夫ですか⁉︎」

カウンターから出てくると、
白い布巾を手に、テーブル拭いて、

「あ、服…」

視線を感じで目を落とせば、
胸元に茶色いシミが、パッと見3つ。

それよりも、伏せたまつ毛が綺麗で、

「早く染み抜きした方がいいと思います」
「大丈夫っす。そんなええもんちゃうし」
「けど…真っ白ですし、とれへんかも…」

まともな返事もできひん状態。

「すみません、テーブルも汚してもうて」
「いえ、大丈夫です」
「あの、電車でいつも」
「へ？」
「よくおんなじ車両座ってて」

なんて声の掛け方やねん！
声をかけるきっかけづくりに必死。
けど、これを逃したら、もう友達にもなられへん気がして。

「ほんまですか？ごめんなさい、全然気づいてへんくて」
「いや、当たり前ですよね。すみません、かえってキモイっすよね」
「そんなことないです！嬉しい、です」

目がなかなか合わなくて。
モジモジ、ソワソワ。
他の人に接客してる彼とは全然違う。
俺にだけ違う。

「あの…また来てもいいですか？」
「もちろんです！お待ちしてます」

推しやからだけど。
まるで俺に恋してくれてるみたいに見えて、こっちまでドキドキが伝わる。