Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ31)

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赤side

彼を電車で見かけて、一ヶ月。
彼に恋に落ちて、一ヶ月。

友達になろうにも、同じ電車に乗ってるだけでは話す機会なんてやって来ないし、なんなら目すら合ったことがない。

距離が一ミリも近づくことのないまま、一ヶ月が過ぎた。

最近では、隣に座ることが多い。

というのも。

「うちわ、何にするん？」
「しげ、ファンサせえへんねんもん」
「けど、目が合うかもやで？男ってだけでインパクトのあるんちゃう？」

そう。
カミチャンの推しは、まさかの俺。真正面にいれば、気づかれるかもしれへん。
ならせめて、隣でその優しい声と匂いを感じていたい。

「しげはね、照れ屋さんやねん」
「アイドルなのに？」
「それがまたいいの！」
「じゃあうちわなし？」
「んなわけないやん！」

スマホの画面を開くと、二人で覗いてあれやこれや盛り上がる。

「ファンサとかもらったら、俺、絶対泣く！」
「何してほしいん？」
「目が合ったら…嬉しい」
「ハートとか投げチューとかやないん？普通」
「そんなんむりっ！」

「俺がそんなうちわ持っててもキモいやろ」
「んなことないやろ！カミチャンはかわええ！保証する！！」
「ん〜、ハマチャンっ！！！好き！」
「ぐへへ」
「何その笑い方！笑」

電車の中、小さな声とはいえ、手を叩いて二人で爆笑してる。
ほんま、いっつも楽しそう。

「明日の待ち合わせ、駅でええ？」
「何時？」
「18時開演やから、15時な」
「早ない⁉︎」
「パンケーキで腹ごしらえして行こ？」
「ええなぁ！」

二人ではしゃいで、笑い合って。
その距離感が羨ましすぎる。