Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ28)

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「すみませんっ」
「いえ」

真っ赤な顔で言うのを横目で見ると、彼は背中を伸ばして座り直して、スマホを取り出した。

「カミチャン、寝過ぎやで。笑」
「起こしてや」
「起こしても起きひんのやもん。笑」
「昨日YouTubeの日やったから」
「また？好きやなぁ。ほどほどにせな体壊すで？」
「うぅ…」

忠告もそこそこに、

「それにしても、ライブよかったなぁ」

聞き覚えのあるワードがちらほら。

「なぁハマチャン、ほんまに連番してくれる？」
「逆にほんまに俺でええの？」

向こうのお隣さんはツレらしく、小さな声につい耳をすましてしまう。

カミチャン、
カミチャン、
カミチャン。

海馬にグッサグサ突き刺さった、隣のこの子の名前。

一駅手前で立ち上がった隣の彼は、最後に気まずそうに頭を下げて、そそくさと降りて行った。
と同時に、しまったドアの向こうで、隣のやつを見上げてくっしゃくしゃの笑顔向けている。

何かが物足りない…
たぶん、あのミルクみたいな優しい匂い。

また会えるかな…

アホみたいなこと考えながら、
俺もスマホを取り出して、メンバー共有のスケジュールアプリを開いた。
明日はライブの打ち合わせが入ってる。