Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ19)

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緑side

「とも、帰ろ」

メガネの奥の目は、めちゃくちゃ優しい。
教室まで迎えに来てくれる大毅くんは、二年生
になって付き合い始めた初めての恋人。

「大毅くん、お待たせ」

駆け寄ると、ぴたりと隣を歩く。

「なぁ。来週の土曜日、時間ある？」
「あ、うん」
「一緒にケーキ食べよ？」

付き合って一か月なんて、男同士やし祝うんおかしいかなって。自分一人舞い上がってるのは恥ずかしいし。気付かないフリしてたのに。
けどたぶん、記念日のケーキかな、なんて。

ちゃんと両思いなんやって、飛び跳ねたくなる。

校門を出て、一つ目の角を曲がると、指先に
冷たくてカサカサの指がふれて、絡めとられる。

「...っ」
「かわい」

思わず立ち止まったところで、目の前に陰。

ちゅっ

微かに唇がふれて、照れ笑いの大毅くんの、眼鏡の奥の瞳と目が合った。初めての、キス。

「とも、ほんまに好き」

「出会えてよかった」

頬を撫でた手で、そのまま抱き寄せられる。

幸せで幸せで。

生まれてきて、今この瞬間が一番幸せで。

やから怖い。

大毅くんには、

大毅くんにだけは知られるわけにはいかない。