Colorful stories 14 （W.短編集） (ページ1)

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ファーストキスに誓う　＃1 ページ1

「とも、おはよぉ」

課の入り口から覗くニヤケ顔。課内の至る所からクスクスと笑い声が上がるのは、もう毎日のこと。出張やらなんやらで大ちゃんが顔出さないと、みんな待ってる節さえある…

一瞬タブレットから顔を上げて後悔。すぐまた視線を落とした。
やって、朝一緒におったし、おはようのキスだっていつも通りしたし。

「神ちゃん、まだおるで。笑」

隣の席から、流星の含み笑いの声。
知ってる。だって、みんなまだクスクス笑ってるもん。

「そろそろ返事してやったら？」

「社長、泣いちゃうで。笑」

みんな、他人事だと思って…！
でっかいため息をつくと、仕方なく小さく手を振り返す。

「あぁ！もぅっ！かわいっ！！見た？ハマちゃん見た？」

飛び跳ねて、めっちゃご機嫌。

「はいはい、見たで？」
「見んな💢俺のんやで！」
「💢」

定番のやりとり。
課内はどっと沸く。

「しげちゃん、もうええ？行くで？ほんま、飽きんなぁ〜」

毎日これやもん。すっかり顔馴染みになった秘書のハマちゃん。
いつもの同情の眼差しではなくて、大ちゃんを追い払った後、今日は珍しく課の中に入ってきた。

「入社式の挨拶、めっちゃよかったから、今日は甘やかしてやってな？」

こそっと耳打ち。
それはもちろんそのつもりやったし。
小さく頷いておく。

再会して約一年。
大ちゃんの愛は落ち着くどころか日々加速している。恥ずかしさはあるものの、満たされてるのも事実。

「幸せそうで何よりやん」
「...まぁ」
「綺麗なったもん。社長のおかげなん、ちょっと癪やけど」
「綺麗って何なん？嬉しくないわ」

なんて言いつつ、自覚はある。
愛されて、甘やかされて、大事に大事にされて。こんな幸せ、想像してなかった。

「やば」

「今日も滾ったわ〜」

「かみしげ、エモ…」

よくわからない呟きは聞こえないフリ。