このリングに願いを込めて (ページ49)

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一年後…

「しげー」
「なにその呼び方。笑」
「やって…」

ギャラリーがおると、友達のフリを徹底する智洋くん。バレないようにそれだけ気を遣うくせに、帰り道毎日ジムに寄ってくれるのがこの子のかわええところ。

「さ、着替えたらうちまでデートやな」
「外でそんなこと言ったらあかんって！もぉ…」

耳まで真っ赤にして睨みつけてくる。そんなところもかわいくて仕方ない。
智洋くんの沼は、ほんま底なし。
日々更新する、智洋くんへの気持ち。

「ほら、早よ帰って誕生日パーティーするんやろ？ケーキ屋さんも寄らなあかんし、早よシャワー浴びてきてくださーい」
「智洋くんも一緒に浴びる？」

もう一度、真っ赤になって怒るかわいい智洋くんを拝もうと思ったのに…

「帰ったら。な？」
「っ⁉︎」

結局、惚れた弱み。
智洋くんには敵わない。これが自然の摂理だから、しょうがない。

「もう無理。帰ろ」
「シャワーは⁉︎」
「要らん」
「浴びてきぃって。めっちゃ汗だくやん」
「どうせ外暑いし」
「目立つって」
「誰のせいやと思ってるん⁉︎」
「知らん」

抱き寄せて、
首元のチェーンを手に取る。

「指に着けてや」

通された指輪に口づける。

「嫌や」

この「嫌や」はもう何回目か。
答えわかってて言うてるけど。

「嬉しかったんやもん」

キラキラ輝くチェーンを、白い指が撫でる。
俺には不似合いなアクセサリーショップ、ようわからんくて、でも小瀧と智洋くんの思いを大事にしたくて、結構ええやつ選んだもん。

「やっぱり好きやなって思った。その時はもう好きやったけど、もっと好きになった」

「やから、指輪も嬉しいけど、これは俺の宝物やねん」

大事そうに撫でると、また服の中に収めてしまう。

今日のために用意した指輪は、ロッカーのリュックの中。
今度は左手用の、ちょっと、いや結っっっ構ええやつ。そしたら指に着けなあかんくなるやろ？

願いを込めて、贈るから。

“ずっとこうしていられますように”

fin.