このリングに願いを込めて (ページ46)

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「大毅さん、まだそこいます？」
「あ、うん。おるけど」
「明日、ちょっと出かけてきます」
「うん」
「のんちゃんに会ってきます」

答えが出たということやろう。必然的に、俺への返事も決まってるということ。

「…帰ってくる？」
訊きたいけど、それを訊くのはちゃう気がして。

「気ぃつけて行っといでな？」
「はい」

止めたいけど、俺に止める権利はない。
笑って見送ることしかできない。

「先に寝るな」

声をかけると、寝室に向かった。

「大毅さん？」

今日初めて聞いた神山くんの声が、柔らかくてホッとする。

朝起きたらもういなかったから、
想いを知ってる分小瀧の失恋を祈ることもできず、かといって気を紛らわす気力もなく、一人でひたすら帰宅を待っていた一日。
待ちに待った声に顔を上げると、リビングの扉から覗く神山くんの姿。

「おかえり」

立ち上がると、気づいた時には抱きしめていた。

「ただいま」

その言葉に、結果はどうであれ戻ってきてくれたんやって。
抱きしめる腕に力を込めると、背中に手が回って泣きそうになる。