このリングに願いを込めて (ページ44)

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「コンビニのバイト、やめます」

ただいまの次の言葉はこれ。

「大毅さん言うてくれてたのに、俺、言うこと聞かへんかったから…ごめんなさい、」

無性に泣きそうなん堪えてただけなのに。

「怒って、ます？」

窺うような顔。

「怒ってへんよ」
「やっぱ怒ってる」
「怒ってへんって！」

「ホッとしてんの」

俺の言葉が、意外だったらしい。
ぐしゃりと顔を歪めると、口を一文字に結んだ。

「もうおらんくならんでや…こんなん、もうごめんやわ」

吐き捨てるように言うと、

「すみません、」

また謝らせてしまう。
謝ってほしいわけちゃうのに…

立ち上がると、早速動き回り始めた。
バタバタと荷物を片付けて、冷蔵庫の中身確認して、忙しなく動き回る。

がんばりすぎる癖は、簡単には治れへんらしい。

「なぁ、まずお茶でも飲もうや」

「ちゃんと、話そ」

連れ戻すと、素直に向かいに座ってくれる。
テーブルには、今朝作っておいた麦茶が二つ、汗をかいている。

「ご迷惑おかけしました」

頭を下げる神山くん。

「迷惑やなんて思ってないから」
「俺、もうちょっと自分のこと大事にしようって思いました。心配してくれる人がいっぱいおるんやなって」
「せやな。神山くんが自分のこと大切にしてくれたら、俺も嬉しい」

はい、
小さく頷いて…

「大変やったけど、いい時間でした」

スッキリした顔。
この子はきっと、もう大丈夫。根拠はないけど、そう思えた。