このリングに願いを込めて (ページ43)

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ドアを開けると、神山くんは、ベッドに腰掛けていた。

部屋に響く、澄んだ鼻歌。
なんとなくその背中に、スッキリと澄んだ雰囲気を感じ取って胸を撫で下ろす。

「おまたせ」
「っ！大毅さん！」

振り返ったその顔は、やっぱり晴れやか。

迎えに行った時には、病室はすっかり片付いていた。

実は4人部屋やったのを1人部屋にしたのは俺のわがまま。俺が毎日お見舞い行くには、個室の方がええやろって、淳太が手配してくれた。
1日あたり一万近い追加料金を払ってるなんて知ったら、神山くんはきっと低頭平身、見えなくなるくらい小さくなってしまいそうやから、絶対言われへんけど。

「神山くん」

今日こそは。
ポケットの中から、チェーンに通された指輪を取り出した。

「部屋に落ちてたから」
「っ！あ…りがとうございます」

出会った日からずっと首元にちらりと覗いていたチェーン、これやったんやなって。
指には通されへんくても、肌身離さずつけてたはずの指輪。倒れた時に何かに引っ掛けたらしく、チェーンが切れていた。
手のひらに乗せると、握りしめて神山くんは立ち上がった。

これでやっと、小瀧とフェアになったつもり。

倒れたその日に着てた服を身に着けた彼は、すっかり顔色も良くなっていて、ちょこまか動き回る姿に、やっと生きた心地がした。

一回の受付に行くと、会計に向かおうとする神山くんを、

「もう終わってるから。行くで」

後ろから引き止める。

「え？」
「やから、混む前に終わらせたから」
「いくらでした？」
「えー、淳太が行ってくれたから知らんわ。淳太に訊いて？」

たぶんアイツなら上手く丸め込んでくれるから。

納得できない神山くんを引き摺るように手を引くと、とりあえず諦めてくれたらしく歩き始めた。