このリングに願いを込めて (ページ36)

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「付き合ってへんよ。昨日、告白はしたけど」
「大毅さんっ、」
「ええやん。ほんまのことやし。嘘つくことちゃう」

「なぁ、神ちゃん…この人と付き合うの？」

「俺、そんなつもりで別れたんちゃう」

一転泣きそうな彼。
右手の薬指には、くすんだ銀色の指輪がはめられている。

「俺、友達になんて戻られへん、」

「なぁ、何のために別れたん⁉︎別れる必要、なかったやん、」

落ち着こ
もう1人の彼がそう止めてくれて、連れ出してくれて、病室が静まり返った。

「すいません、変なとこお見せして」
「全然変ちゃうよ。詳しくはわからんけど、彼も神山くんのことまだ好きってことやんな？取り乱すのは当たり前やろ。本気なほど」

口では大人なフリしてるけど、ほんまは心、めちゃくちゃ乱されてる。

「ちゃんと話した方がええと思う。どっちにせよ大切な人なんやろ？」
「…はい」
「どっちを選ぶのか、どっちも選ばへんくても、それは神山くんの自由やから」

「それで出てけなんて言わへんし。てか、フッても出て行かんで欲しいってのが本音やけど」

「とりあえず、家んことは置いといて考えてくれたら嬉しい」
「はい、」

「俺、一旦練習行くな？2人、また来るやろ？積もる話もあるやろうし、ゆっくり、ちゃんと話し？」

神山くんの目が、二人の荷物を捕らえた。

「帰り、また寄るな？来る時、ラインするから」

自分の告白の返事はもちろん気になる。
けど、今はとにかく彼が大切で。

彼が選んだ道ならば、どれでも応援するしかないんだって思えたから。
そして、彼の返事に関わらず、自分の気持ちが簡単に消えるものではないということも知ってしまったから。

やから、神山くんが笑ってくれたらそれでええなって。

コンビニのビニールを冷蔵庫に入れると病室を後にした。