このリングに願いを込めて (ページ35)

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久しぶりの1人の部屋は、無駄に広くて静かすぎて、なかなか寝付けなくて。
目が覚めてしまったのは6時前。

神山くんを守れる男でいたいから、ちゃんとボクサー重岡大毅はサボらない。

ランニングして、公園でシャドーして、
ちゃんと朝飯食って、
“入院のしおり”読み込んで準備した荷物を持って。

このままやと、面会時間より早く着きそう。

あのコンビニまで回り道して、あの時とおんなじプリンと杏仁豆腐を買って。

車で15分走ると、この辺で2番目に大きな総合病院。
足速に病室に向かう。

ノックすると、中から聞こえた神山くんの返事。声は昨日より元気そう。

「おはよう」
そう言う前に、見知らぬ人達が目に入って、とりあえず会釈すると、慌てて頭を下げる2人。

「出直すな？」
「あ、いえ大丈夫です」
「え…シゲや！望！この人ほら！！」
「人を指差すな！て…ほんまや！シゲや！」

「流星のテンション上がったの久々に見た…」

二人のやりとりが子どもっぽくてかわいらしい。

「2人とも失礼！ちゃんと挨拶して」

先生に注意される保育園児みたいに神山くんに諭されてる。
学生時代もこんなんやったんやろうなって微笑ましく見てたら。

「え…もしかしたら神ちゃんが居候してるのって」
「うん、大毅さんとこ」
「大毅さんて…付き合ってんの？」

長身の方(2人ともだいぶ高いけど)の声が尖る。