このリングに願いを込めて (ページ34)

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「大丈夫ですって。寝不足です、なんか大袈裟なことになっちゃってすみませんでした」
「もっと自分を大事にして」
「はい」
「もっと俺を頼って」

「コンビニのバイトはやめて」

「お酒は外では飲んだらあかん」

「家事は2人でしよう」

「料理は教えてくれる？がんばって作れるようになるから」
「ちょっと待ってください！」

「俺、大毅さんに雇われてるようなもんなのに…そんなヒモみたいな…」

「それじゃ、俺はこの家に置いてもらう権利はありません」
「じゃあ恋人になったらええ？」
「そういうことじゃ…恋人って、そんなんじゃないでしょ」

珍しくムキになって。
初めて見る感情的な顔。

「せやで？好きやから一緒におりたいの。好きやから恋人になりたいの」

「好きやから守りたいの、神山くんのこと」

ぎゅっと口を結んで黙り込んでしまった神山くん。
何かに耐えてるみたいなその顔が苦しそうで、

近づいて抱きしめると、ちょうどお腹の辺りでぐずぐず鼻を啜るような音が聞こえて。

「ちょっと考えてみてくれへん？」

「こんな時にごめんやけど、ほんまはずっと言おうと思っててん」

「こんなんなってやっと言えるとか、ほんまビビり、」

「けど、本気やから」

しばらくの沈黙の後、
面会時間の終わりを告げる音楽が流れ始めた。

名残惜しいと思ってるのは、たぶん俺一人だけど、今はそれでもいい。

「明日も来るから、なんか欲しいもんあったらラインして」

「スマホと充電器と財布だけ、そこの鍵付きんとこに入れてるから」
「あの…っ、ありがとうございます、荷物も…気持ちも。嬉しかったです」

最後はちょっとだけ笑顔。
病室を出る時振り返ると、ちょっと寂しそうに見えたのは、たぶん俺の願望。