このリングに願いを込めて (ページ33)

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「お前のせいやないって」
「そうそう。一人暮らしの家で倒れたよりずっとよかったで」
「けど、俺がお酒飲ませたから」

「俺が家のことさせてたから」

「俺が止めてれば、「しげ！！」

「大丈夫や。休めば直る言われたやろ」

「目ぇ覚ました時、お前がそんな顔しててどうすんねん、」

「モンチは絶対迷惑かけたって気に病むやろ？お前がそんな顔してたら余計に自分責めるんちゃう？」

わかってる。わかってはいるけど。

「俺ら帰るから、ちゃんと支えたりいいや」
「頼んだで、しげ」

返事ができない俺を置いて、2人は出て行った。
真っ白い四角の部屋に2人きり。

真っ白な神山くんは、布団に溶けて、消えていなくなってしまいそうに儚くて…

いなくならんでや、

その思いだけがぐるぐるの体中を駆け巡っている。

まつ毛がぴくりと動いたかと思うと、ゆっくりと瞼が開いた。

ぱちぱち、

天井をしばらく見つめると、ゆっくりと顔をこちらに向ける。

「だいきさん？どうしたん？」

布団から手を出すと、俺の膝にふれる。
大丈夫、とでも言うてるみたいに、ゆっくりと撫で続けた。

やっと呼吸が落ち着いた頃には、枕元のチェストにティッシュの山ができていた。

「びっくりしました。起きたら泣いてるから」
「びっくりしたんは俺の方やし…」

「もし神山くんに何かあったら…」

「もし神山くんがこのまま起きひんかったらって」

時計を見ると、もう夕方。神山くんは20時間以上眠り続けていた。
本当に、大袈裟でもなく失うかもしれないと思った。
無理やりにでもバイト辞めさせなかったこと、“好き”って言わなかったこと、

いっぱいいっぱい後悔した。

もう後悔したくない、

そう思った。