このリングに願いを込めて (ページ29)

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「いらっしゃい！」

「そうそう！これこれ！」
　たぶん声に出してたら3人ともそう言ってたと思う。顔を見合わせると、満足げな二人。きっと俺も一緒やけど。

もう注文しなくても出てくる一杯目の飲み物と料理たち。神山くんが飲み物と小鉢を運んできてくれて、その間にガラスケースから取り出した串を焼き始めるハマちゃん。
すぐにええ匂いが漂い始めた。

「神ちゃん、今日はコンビニあるん？」
「今日はここで終わりです」
「ほんならしげと帰れるな？」
「待っててくれるんですか？」

期待以上のリアクションに、ビールを慌てて置くと、ブンブン首を振る。
どっちが年下なんだか…
神山くんの表情、言葉、態度一つで、俺の心はすぐに浮いたり沈んだり。

「どう？しげん家は。困ってへん？」
「はい、めちゃくちゃ居心地よくて、快適です」
「しげ、迷惑かけてへん？」
「ベッドまでお借りして。迷惑かけてるんはこっちばっかです」

神山くんが他のテーブルに呼ばれて行った途端、聞き捨てならないとばかりに二人が顔を寄せた。

「ほーん？おんなじベッドで寝てるということでよろしいですか？重岡さん」
「は？進展あったん⁉︎」

二人揃って、ニヤニヤ。
逃がさないとばかりに、喰らいついてくる。

「進展はないって！知っとるやろ！」
「ええ感じに見えるけど」
「どうなん？実際」

まだ1週間、少しだけ仲良くなった自負はある。けど、結局それ止まり。
恋愛対象として意識してもらえなければ、どれだけ仲良くなっても同じ。

「どうやったら意識してくれるん？」
「アピールするしかないんちゃう？」
「告白するとか」
「じっと見つめてみるとか」
「手ぇ繋いでみるとか」
「おんなじベッドで寝てるんやろ？チャンスあるんちゃう？」

恋バナを酒のつまみに酒が進む2人。
乗せられて飲んで。
珍しく、座ってるのにふらつき始めた頃、

「大毅さん、帰りますよ？大丈夫ですか？」
「だいじょーぶ、フラフラするだけやから」

気づけばエプロンも外して私服に着替えた神山くんが、俺のリュックを持っていた。