このリングに願いを込めて (ページ25)

今日:94 hit、昨日:51 hit、合計:78,963 hit

25 ページ25

一本出れば、まぁまぁ大通り。
キャップのツバを少し下ろす。

「ここが一番近いスーパーな？来たことある？」
「はい、大学の帰り沿いなんで、買い出しは大体ここです。けど、さっきの道は初めて通りました」

今までも知らず知らずすれ違ったりしてたんかもな、なんて想像するだけでワクワクしてしまう。

「車も出すから、時間合わせて一緒に行こうな」

結構ええ気分転換やねん
そう添えると、素直に頷いてくれる。

自動ドアが開いてスーパーに足を踏み入れようとしたところで、背後からカメラのシャッター音が聞こえた。

「シゲじゃない⁉︎」
「絶対そうだって！」

明らかにテンションの高い若い女性の声。
着いて来られたら困るし、こういう時は先手必勝。
振り返ると、悲鳴にも似た歓声。

「本物！かっこいい！」
「握手して下さい！」
「写真撮って下さい！」

必死に笑みを浮かべながら一通りが応えると、ようやく解放された。
「応援してます」の声に手を振る。
慌てて置き去りにしてた神山くんの姿を探す。

見計らったように野菜売り場からひょこっと姿を見せた神山くん。

「お疲れさまです」

「すごいですね、芸能人みたい…びっくりしました」

「ほんま、たまらんわ〜」
そう愚痴ろうとしてやめた。
神山くんがめちゃくちゃキラキラした目で俺のこと見てるから。

「めっちゃ喜んではりましたね、あの子たち」

「わかる。俺も大毅さん見ると元気出るもん」