このリングに願いを込めて (ページ24)

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「ありがとうございました。ケガとかしませんでしたか？」

大学生の一人暮らしにしても少ない荷物は、ものの1時間で全て俺の家に収まった。
大して汗もかいてないのに、一旦休憩〜とソファに沈むともう立つ気力はない。

「ごめん、水しかないけど」

ありがとうございます。
神山くんも疲れてたらしい。受け取ると一気に半分近くを飲み干した。

「ボクサーさんの商売道具なのに…ほんまに大丈夫ですか？」

ほんま、心配性。
その視線は俺の右手に移る。

「大丈夫やって！けがしてへんし、鍛えてんねんからこんくらい余裕やし」

右ストレートを繰り出すと、やっとホッとしたように笑ってくれる。

早速働こうとししたのか、
冷蔵庫の中身をチェックすると、日焼け止めを塗って帽子を被った神山くん。その白い肌は、努力の賜物なんやって、同棲(誰がなんと言おうと同棲！)開始数分で知ったプチ情報。

「スーパー行くん？」
「はい、この辺微妙に道わからへんくて。慣れたいし、散歩がてら行ってきます」

案内するからと言えば、そのままもう一度ソファに腰掛けてくれるから、
一緒にお出かけ。
言い換えれば“デート”
心の中で思うんは、勝手やろ？

「さ、行きますか！」

張り切る俺にくすくす笑いながら、ついてくる。まるで飼い主と飼い犬みたい。笑