このリングに願いを込めて (ページ18)

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「ちょっ、タンマタンマ！！」

乗りに乗ってきたスパーリング止められて、

「なんやねん！ええとこやったのに」
「速いし痛いし…殺す気か！」

最高の褒め言葉。
ミット外して、手を大袈裟にイタタ…って振っている。

「ちょっと休もか？」
「あと1回」

照史は人の返事無視してリングから一旦出てく。

「明後日モンチ来るん？」
「うん」
「やろな。めちゃくちゃはりきってるやん！」
「絶対勝つ。カッコええとこ見せたんねん」
「楽しみやなぁ〜」

グローブのまんまドリンクを煽ると、リングロープをまたくぐる。
照史は、諦めてミットを手に取った。

ダッシュでシャワーを浴びて着替えると、スマホを手に取った。
まだ濱ちゃんの開店前の時間。セーフ！

『もしもし』

通話ボタン押したらすぐに聞こえたスマホ越しの声。

「電話、大丈夫やった？」

心臓バックバク、呼吸困難寸前…
付き合い立ての高校生みたいやんけ！みんな、こんなん乗り越えてんの⁉︎

やって、ボクシングしか知らんねんもん！
初恋やねんもん！
誰に言うでもなく言い訳を並べても、全く落ち着かない。

けど、あくまで冷静に。落ち着け、俺！
やって俺の方が年上やし。
見栄張ってもしゃーないとわかりつつ、大人ぶりたいんやもん。

「ごめん、明日は公園も濱ちゃんも行かれへんから」
『試合前日ですもんね、調子はどうですか？』
「めっちゃ楽しい！」

大毅さんらしい
なんてクスクス笑い声が耳をくすぐる。

『楽しみにしてます』
「終わったら、打ち上げでしゃべろうな？」
『うち貸し切りしてましたよね、淳太さん』
「神山くんは、バイト？」
『明日後はパーティなんで、ハマちゃんも俺もお邪魔します』

ザッ
ザッ

歩いてる音。
離れててもこうして時間を共有できる幸せに満たされる。

「明後日やねんけど、ジムの場所わかる？」
『淳太くんがハマちゃん家まで迎えにきてくれることになってて』
「見とってな？俺のボクシング」
『楽しみにしてます、ほんまに』

ワクワクが止まらない。こんなに楽しみな試合は、いつぶりやろうか…

「終わったら、引っ越し手伝うからな？」
『ありがとうございます、それも楽しみです』

神山くんが遠慮せえへんかった。
ちょっとは甘えられる存在になれてる？
そんな些細なことで、舞い上がりそうになる。