このリングに願いを込めて (ページ17)

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「え、いやいや、何言ってるんですか」
「部屋、余ってんねんて！」

目まん丸にして、めちゃくちゃ慌てて。

「そんなことできません！」
「ハマちゃんはええのに？」
「そういうことやなくて…」
「出会ったばっかやから？」
「……」

そら、ハマちゃんより関係は浅いし、まだお互いのことよう知らんし。
神山くんは真面目やから、いや、そうじゃなくても普通遠慮するよなって。

「初めて会った時、憶えてる？」
「…はい」

突然そんなん言うから、神山くん、ちょっと戸惑ってる。

「家に帰りたくなくて、ここおったの。帰ると一人やん？一人になると嫌なことばっか考えてイライラして、ボクシングのこと嫌いになりそうやってん、」

「そんな時、神山くんが声かけてくれて。なんでかわからへんけど、めちゃくちゃ救われた」

「神山くんがうちにおってくれたら、俺は助かる。どう？ウィンウィンちゃう？」

ちょっと俯いて、迷ってるような仕草。

「家賃…受け取ってもらえるなら」

彼なりの譲歩案。

「いらんって！俺得してばっかやん！」
「俺も得してばっかです…あきません、」
「ええやん！ほら！ウィンウィンやん！」
「よくないです！2万9千円しか出せませんけど」
「ほんなら折半しようや！1万4500円」
「折半するなら大毅さんの家賃でしょ」
「ええやん、意外と頑固やなぁ」
「大毅さんがおかしいんですって！」
「俺がいいて言うてるんやから、いいの！」
「ほんなら……家事一切任せてください。もし大毅さんが嫌やなかったら」
「嫌なわけないやん！まじで？え？ええの？」

何がおかしいのか、肩を揺らして笑ってる。

「実家でもやってたんで、一通りはできるんです。高校のあだ名、“オカン”でした。笑」

見た目にそぐわない予想外のあだ名にひとしきり笑った後、

「じゃ、早速案内する！」

早る気持ちは抑えられなくて、神山くんを引きずるように走り出した。