このリングに願いを込めて (ページ16)

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「ハマちゃん、どうしたん？」

「今？公園。すぐ近くの。うん、そこそこ」

「大毅さんと会ってんねんて。言うたやん、木曜日は大毅さんと会うてるって」

「迎えとかいらんって！うん。ちゃんと帰るから心配せんとって」

「はいはーい」

何事もなかったようにスマホをしまってるけど…
神山くんのハマちゃんに向けた言葉は、まるで恋人同士のようで。

「ハマちゃん？」
「はい」
「大丈夫？なんかあった？」

知りたいのに、はっきり訊かれへん。
かと言って、流せるほど大人ちゃうし。

「ああ、今ハマちゃん家に居候さしてもろてて」
「はぁ？」

予想外すぎる言葉に、思わず声がデカくなってしまう。
しー！
なんて、人差し指を下唇に当てた。

「この前の家の大家さん、ご高齢で息子さんとこ行かれるらしくて、取り壊しが決まったんです。一ヶ月ホテル代出るんでその間に新しいとこ探さなあかんのですけど、なかなか見つからへんくて」

「今より家賃上がると、正直厳しいんですけど、しゃーないかな…って」
「ほんなら！」

チャンピオンになった時にセキュリティのええとこ住むように言われて引っ越した家は、無駄に広くて使ってない部屋があって、ボクシングしかない俺には邪魔なだけ。

「うち来たらええやん！」

チャンス到来！ここぞとばかりに押しに押しまくる。