このリングに願いを込めて (ページ15)

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試合まで1ヶ月。
連絡するって口実で手に入れた連絡先。(棚ぼたで目標達成！)

気ぃ遣いの彼からはもちろん、試合を控えたボクサーに連絡なんて来るはずもなく。

“今日もバイトやろ？濱ちゃんの前に迎えいくな？”

週一の逢瀬の時だけは、堂々と連絡できる。
恋って、こんなに楽しくて、こんなに難しいんやって初めて知った。

「なんか、みるみるシュッとしてく…」
「減量真っ只中やしな」
「辛いですか？」
「そら辛いで。けど、勝ちたいから」
「なんか…ボクシングしてる大毅さん、めっちゃかっこいいです。やっぱり好きなんですね、ボクシング」

神山くんと約束を交わしてから、周りの目なんてどうでもよくなって。
どうしてあんなに外野に心乱されていたのか。
俺を見てくれる、俺を応援してくれる人の声だけ聞いてればええんやって。

かっこええとこ、あの子に見せたい、
それだけでひたすら拳を振る毎日。

ボクシング始めた高校生のころみたいに、純粋にボクシングに挑んでる自分に驚いてる。
ただ、勝ちたい、それだけで一日何時間もジムに居残ってたあの頃みたいな毎日。
めちゃくちゃ幸せな時間。

と、その時。
夜の公園のベンチでバイブ音が響いて、神山くんの肩が震えた。
お尻のポケットからスマホを取り出すと、
　
すみません、
断って耳に当てた。